TAGTHAi Easy Pay 本音レビュー ― タイで旅行者もQR決済できる時代は来たのか【2026年2月実地テスト】

タイのQR決済は「速い」「安い」「便利」の三拍子

タイに住んだことのある人間なら、PromptPay(プロンプトペイ)のQR決済がいかに快適かを知っている。

筆者はバンコク在住経験があり、現在もタイと日本を行き来する生活を送っている。タイでの買い物は、基本的にカシコン銀行のPromptPayで済ませている。

どのくらいQR決済に依存しているかというと―タイのセブンイレブンではQR決済が使えない。だから、同じようなコンビニであるBig C miniで買い物をしている。品揃えも規模もセブンとほぼ同じだが、Big C miniではQR決済が使える。それだけの理由で、セブンが目の前にあってもBig C miniに入る。

現金を使うのが嫌というよりも、スキャンして一瞬で決済が完了する即時性と、履歴が残る便利さに慣れすぎてしまった。PromptPayの重症患者である。

そんなQR決済主義者が、旅行者でもタイでQR決済ができるという話題の新サービス「TAGTHAi Easy Pay」を2026年2月に実際に使ってみた。

結論を先に言う。「無いな」と思った。

その理由を書く。

TAGTHAi Easy Payとは何か

TAGTHAi Easy Payは、タイ国政府観光庁(TAT)とカシコン銀行(KBank)が提携して始めたサービスだ。

外国人旅行者は、タイの銀行口座を開設するのが難しい。そのためPromptPayなどのQR決済が使えない。TAGTHAi Easy Payは、銀行口座がなくてもタイ国内のQR決済対応店舗で支払いができるようにした仕組みである。

利用までの流れはこうだ。

  1. カシコン銀行の外貨両替ブースに行く(パスポート持参)
  2. PAY & TOURというプリペイドカードを発行してもらう
  3. 外貨(日本円など)を両替してカードにチャージ
  4. TAGTHAiアプリをダウンロードしてアカウント作成
  5. アプリとPAY & TOURカードを紐付け
  6. QR決済が使えるようになる

登録手順の詳しいスクショ付き解説は、「タイ一択」さんの記事が丁寧にまとめている。 → https://runbkk.net/tagthai-qr-payment/

また、筆者も登録プロセスをPOV動画で撮影した。実際の窓口でのやりとりの雰囲気が伝わると思うので、参考にしてほしい。

本記事では、登録手順ではなく「実際に使ってどうだったか」にフォーカスする。

実際に試してわかった「3つの壁」

壁その1:チャージがカシコン銀行の両替ブースでしかできない

これが最初の壁だった。

アプリからクレジットカードでチャージ? できない。コンビニでチャージ? できない。カシコン銀行の外貨両替ブースに、物理的に足を運ぶ必要がある。

しかも、すべてのカシコン銀行ブースが対応しているわけではない。サイアムパラゴンやカオサン通り、スクンビットSoi4あたりのブースでは対応しているが、事前にカシコン銀行のサイトで確認しておかないと「行ってみたら非対応だった」ということも起こりうる。

初日に空港で手続きできればまだいい。しかし市街地到着後にカシコン銀行を探して、PAY & TOURカードの発行手続きをして……と考えると、貴重な旅行時間が確実に削られる。

もし使いたいなら、空港で手続きする一択だ。

壁その2:両替レートが悪い

TAGTHAi Easy Payへのチャージは、タイバーツを直接入金できない。外貨(日本円など)をカシコン銀行の両替ブースでバーツに両替し、その金額をチャージするという流れになる。

ここで引っかかるのが両替レートだ。

バンコクには「スーパーリッチ」をはじめ、高レートで有名な両替所がいくつもある。旅慣れた人なら、少しでもレートの良い両替所を選ぶだろう。しかしTAGTHAi Easy Payを使うためには、カシコン銀行の両替ブースで両替するしかない。そしてそのレートは、高レート両替所と比べると明らかに悪い。

「手数料ゼロのQR決済」を使うために、「レートの悪い両替」を強制される。節約したいからキャッシュレスを使いたいのに、入口で損をしている。本末転倒だ。

壁その3:トランザクションが遅い&エラー ― これが最大の問題

壁その1と壁その2は「面倒」「もったいない」の話だ。我慢すれば乗り越えられる。しかし壁その3は、使い続けるかどうかを決める体験の話である。

TAGTHAi Easy Payのトランザクションは、PromptPayと比べて明らかに遅い。

PromptPayは、QRコードをスキャンして金額を確認して送信すれば一瞬で決済が終わる。在住者にとっては空気のように当たり前の速さだ。

TAGTHAi Easy Payは違った。スキャンして、何か数秒待つ。場合によっては十数秒。

たかが数秒だ。しかし、PromptPayの即時性に慣れた身には、その数秒が異様に長い。レジの前で画面を見つめながら「まだかな」と待つ時間は、キャッシュレスの「速さ」というメリットを完全に打ち消している。

中間に何かを経由しているような遅さで、PAY & TOURのプリペイド口座を別の決済システムを介して処理しているように感じた。実際の内部システムは不明だが、ネイティブのPromptPayとは明らかに別物のトランザクション速度だった。

現金で払った方が速い。 そう思った。

そしてトドメはBTSだった。

バンコクの高架鉄道BTSには、QRコード対応の券売機がある。TAGTHAiのパンフレットにもBTSで利用可能との記載があった。

BTSの券売機は紙幣対応のものが少なく、基本的には硬貨利用が前提だ。紙幣の場合は窓口で買えるが、いつも並んでいる。QR決済が使える券売機は在住者にとっても旅行者にとってもありがたい存在のはずだった。

実際にBTSでTAGTHAi Easy Payを使ってみると、決済は成功した。アプリのTransaction historyには「QR Payment at BTS」17バーツの記録が残っている。

ただし、成功するときもあれば、エラーで通らないときもあった。

券売機の前で画面を見つめたまま決済が通らない。後ろに人が並んでいる。焦る。もう一度試す。またエラー。別の日には通る。この「通るかどうかわからない」という不安定さが問題なのだ。

戦意喪失だった。

遅いだけならまだ我慢できた。しかし成功するかどうかわからない決済手段を、旅行者に勧められるかというと――勧められない。

結局、TAGTHAi Easy Payの残高を自分のカシコン銀行口座に送金して終了。テスト打ち切りである。

セブンイレブンを素通りしてBig C miniに行くほどQR決済を愛している人間が、数回で使うのをやめた。初めてタイに来る旅行者にとって、TAGTHAi Easy Payの「QR決済ができる」というメリットは、この信頼性ではかなり薄いと言わざるを得ない。

公平に言えば、良い点もある

否定ばかりではフェアではないので、評価できる点も挙げておく。

銀行口座なしでタイのQR決済インフラに乗れるサービスは、TAGTHAi Easy Pay以外に存在しない。 これ自体は画期的なことだ。

タイのQR決済対応店舗であれば、カシコン銀行に限らずどの銀行のQRコードでも使えるので、互換性の面では問題ない。

また、VISA加盟店ではカード決済にも対応しているため、QR以外の使い道もある。

返金がカシコン銀行の両替ブースで即日可能なのも安心材料だ。帰国日に余った残高を返金してもらえるので、「チャージした分が無駄になる」という心配はない。

長期滞在者やタイのリピーターで、カシコン銀行の両替ブースが行動圏内にある人には、チャージの手間もそこまで苦にならないかもしれない。

ただ、それは「タイに慣れている人」の話だ。

では旅行者はどうすればいいのか ― クレカタッチ決済という現実解

TAGTHAi Easy Payが現時点で厳しいとして、旅行者はタイでキャッシュレスを諦めるしかないのか。

そんなことはない。クレジットカードのタッチ決済(コンタクトレス決済)が、2026年現在のタイではかなり使える選択肢になっている。

バンコクの交通機関でのタッチ決済対応状況

交通機関タッチ決済対応ブランド
MRT(地下鉄)VISA / Mastercard
ARL(エアポートレールリンク)VISA / Mastercard
SRTレッドラインVISA / Mastercard / JCB
BTS(スカイトレイン)×ラビットカードまたは現金
路線バス(一部)VISA / Mastercard
チャオプラヤー電動フェリーVISA / Mastercard

MRT・ARL・SRTレッドラインの改札では、日本で発行したVISAまたはMastercardのタッチ決済対応カードをそのままかざすだけで乗車できる。Suicaと同じ感覚だ。

BTSだけは2026年時点でもタッチ決済に非対応で、ラビットカード(交通系ICカード)か硬貨での切符購入が必要になる。これは覚えておきたい。

店舗でのタッチ決済

セブンイレブン、マクドナルド、スターバックス、ショッピングモール内の店舗などでは、VISAやMastercardのタッチ決済がほぼ問題なく通る。Apple PayやGoogle Payにカードを登録しておけば、スマホをかざすだけで完結する。

ただし、屋台やローカル食堂、地方の小規模店舗では依然として現金が必要だ。バンコクの屋台でガパオライスを食べるなら現金は持っておく必要がある。

結論:カードタッチ+少額の現金が最適解

2026年現在、短期旅行者がタイでキャッシュレスを実現するなら、以下の組み合わせが最も合理的だ。

  • VISAまたはMastercardのタッチ決済対応カードを1枚持つ(交通機関+コンビニ+モール)
  • 屋台・ローカル食堂・BTS用に、2,000〜3,000バーツ程度の現金を両替しておく
  • 海外利用手数料の低いカード(Wise、Revolut、三井住友NLなど)を選べば、為替コストも抑えられる

QR決済にこだわる必要はない。カードタッチ一発で、十分キャッシュレスは実現できる。

TAGTHAi Easy Payが「アリ」になる未来

TAGTHAi Easy Payを否定したいわけではない。今はまだ「早い」というだけだ。

もしこの先、以下のようなアップデートがあれば、評価は大きく変わるだろう。

アプリからクレジットカードやデビットカードで直接チャージできるようになる ― 両替ブースに行く必要がなくなれば、導入のハードルは劇的に下がる。

トランザクション速度がPromptPayネイティブと同等に改善される ― 「数秒の遅延」がなくなれば、在住者のPromptPayと同じ体験ができるようになる。

空港到着時にワンストップで登録&チャージが完了する導線が整備される ― 到着ゲートを出てすぐに手続きできれば、旅行者の時間を奪わない。

タイ政府が旅行者向けキャッシュレス環境の整備に動いている姿勢は本物だと思う。TAGTHAi Easy Payは、その第一歩だ。

PAY & TOURカードは発行から1年間有効である。テスト時に残高は自分の口座に送金してしまったが、カード自体はまだ生きている。次回渡航時に改めてチャージして使ってみるつもりだ。

もしトランザクション速度が改善されていたら、この記事を更新する。

しかし、2026年2月時点で旅行者におすすめするかと聞かれたら、答えは「ノー」だ。

旅の通信環境もあわせて整えておこう

タイ旅行では、キャッシュレス決済を使うにもまずネット接続が必要だ。TAGTHAi Easy PayもAiraloのeSIMも、スマホがオンラインであることが前提になる。

渡航前にeSIMを設定しておけば、到着した瞬間からネットに繋がる。レンタルWi-Fiや現地SIM購入の手間とは無縁だ。

【2026年版】海外旅行のeSIMはAiralo一択 ― 設定方法と選び方

また、タイではahamoやRakuten Mobileのローミングも使える。eSIMとキャリアローミングの使い分けについてはこちらで詳しく解説している。

【決定版】海外でスマホを使うならeSIMだけじゃない!ahamo・楽天モバイル・povo2.0のローミング活用術

参考リンク


本記事の情報は2026年2月時点のテスト結果に基づく。TAGTHAi Easy Payは今後のアップデートで改善される可能性があるため、最新情報は公式サイトを確認してほしい。

この記事を書いた人

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